おジャ魔女の登場しない映画『魔女見習いをさがして』は何故おもしろいのか

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20周年を経てファンに贈る

©東映・東映アニメーション


11月13日より公開、鬼滅フィーバーが冷めやらぬ中、初週末興収ランキングで4位を獲得するという人気ぶり。
そんなおジャ魔女どれみシリーズ最新作だが、公開前から不安視されている要素がある。
それは、「おジャ魔女シリーズなのに、おジャ魔女が全く登場しない」ということ。
東映作品としては、過去作品を振り返るモノはこれまで数多く制作されてきた。
子供の頃に熱中していた大好きな作品を大人になって改めて触れる機会。公式が再会の場を用意することで、作品の持つ新たな魅力に気づくきっかけが生まれ、ファンの中ではより一層に大切な作品へと昇華する。
おジャ魔女と聞いてよくわからない方は別記事「20代になって改めて鑑賞するおジャ魔女どれみが面白すぎる」を参考にしてほしい。

何故、おジャ魔女達は登場しないのか

過去作品を振り返るファンムービーを多く制作してきた東映が、今回何故おジャ魔女シリーズでありながらおジャ魔女を登場させないのか。

結論から申し上げると、ファンムービーなのである。

ファンムービーと言っても文字の意味そのままではなく、ファンのためのムービーであり、ファンが主人公のムービーということ。
つまり、おジャ魔女を観て育った私達自身が本作のメインであり、主役であるのが醍醐味。

3人のヒロインを通して観る「おジャ魔女どれみ」

映画『魔女見習いをさがして』のヒロインは、長瀬ソラ吉月ミレ川谷レイカの3人。

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かつて魔女見習いたちが集っていたMAHO堂―
鎌倉にある洋館での運命的な出会いをきっかけに、三人は飛騨高山・京都・奈良と
「おジャ魔女どれみ」ゆかりの地を巡る旅へ!様々な土地を巡る旅を通して、3人はお互いの距離を縮めていく。

作を彩るメインキャラクターの3人は、みんなおジャ魔女が好き。
おジャ魔女を観て育ち、大人になった今でもおジャ魔女というコンテンツを忘れていない。
本作を鑑賞して私がおもしろいと感じたのは、ソラミレレイカも、好きなおジャ魔女が“自分とは正反対に位置する”キャラクターが好きだということ。

れみちゃんが好きな長瀬ソラは、周りの意見に流されがちで、自分を表現することが得意ではない。教師になる将来の夢を抱いているも、実習先でのトラウマから自分自身の適性を疑ってしまい、自信そのものを失くしてしまう。

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これだけの情報を見ると、ソラと近しいおジャ魔女のキャラクターは、キャラデザも含め、常におっとりした自己主張が苦手な「藤原はづき」だと思ってしまいがちだが、ソラの好きなキャラクターは「春風どれみ」。
どれみは、ソラとは正反対で、自己主張も強く、ちょっとドジで、おせっかい。でしゃばる度に騒ぎを大きくしてしまう。好きな男の子に告白する勇気を出すために魔法を覚えようとした一話が印象的。
どれみは普段から明るく、友達も多く、時にはみんなをまとめるリーダーとしても、周りから愛されていた。
ソラは、明るくて皆から慕われるどれみを、憧れの対象として子供の頃から好きだと語る。小説版でもソラと同じく大人になったどれみは教育の道を進んでいる。



一方、はづきちゃんを好きな吉月ミレはというと、東京で一流貿易商社に勤めているキャリアウーマン。リーダー気質で海外生活が長かったこともあり、思ったことをすぐに口にしてしまいがち。姉御肌でもあり、3人の中では一番自立している印象。

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この情報を見ると、ミレは、アメリカ帰りの帰国子女で、天真爛漫な女の子「飛鳥ももこ」や、現実的でしっかりした「妹尾あいこ」っぽさがある。しかし、ミレの好きなキャラクターは、「藤原はづき」である。
他の2人に比べてミレがはづきを好きな描写は少ないが、ミレ自身に無い物をはづきが持ち合わせているのではないかと予想する。ミレの解決能力やリーダーシップは他のキャラ達と被るところがあるが、唯一“はづきらしさ”は持ち合わせていない。序盤の仕事での苛立ちも、ミレではなく、はづきならと仮定すると物事が全て丸く収まってしまう。嫌なことは我慢しなければいけないという意味ではなく、ミレとは違う部分でのはづきのような大人らしさが物事を円滑に進め、結果プラスになることもある。ミレ自信、そのことは心のどこかで無意識下に認識しているのだろう。


いて、あいこちゃんを好きな川谷レイカは、何かと元気で、天然っぽさを持ち合わせた主人公気質。地元のお好み焼き屋でアルバイトをしながら、絵画修復士になる夢のために、進学費用を貯めるも、ダメ彼氏に振り回されている。両親は幼い頃に離婚して心のどこかに未だにトラウマを抱えている。

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レイカは、性格だけで判断すると「春風どれみ」寄りなのだが、他の2人と違い、境遇から来る共感性により「妹尾あいこ」が推しである。
しかし、境遇が似ているだけで、レイカとあいこの話は似ても似つかない。両親が離婚をしていても明るく振舞えるあいこはしっかりとした発信力がある。ダメ彼氏にノーと言えないレイカは、あいこちゃんから自分にないパワーと勇気を感じるのだろう。


のように、3人と3人の好きなおジャ魔女メンバーを比較すると、どこか対照的な部分がある。
20代にもなって映画を観ていると、主人公に感情移入して琴線に触れることが多いが、メタ映画でもある本作は、メイン3人が子供の頃におジャ魔女を観ているという前提。小さい頃の憧れでもある魔法、その魔法を使う魔女見習い達。
自分の中に無いモノに憧れを抱き夢を見る少女達を想定した、制作陣の設定に対する拘りが3人の行動や性格から垣間見える。

メインにタレント声優を起用

映画『魔女見習いをさがして』のヒロイン ソラミレレイカは、“『おジャ魔女どれみ』ファン”として知られる豪華メンバーがCVを担当する。
長瀬ソラは、女優として映画、TVドラマを中心に話題作への出演が目覚ましい森川葵が担当。
吉月ミレは、元SKE48のメンバーであり、最近では演技以外にも、小説家として活躍する松井玲奈が担当。
川谷レイカは、ももいろクローバーZのリーダーであり、映画には声優での出演が目覚ましい百田夏菜子が担当する。

予告が公開された当初、「メイン3人全てのキャラクターをタレントに任せる」という挑戦的な配役でファンからは不安視されていた。


映画本編での3人の印象

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映画本編でのメインの3人は、私自身、最初こそ違和感を覚えたものの、すぐに気にならなくなった。
特に森川葵の出演する作品は、数多く観てきたが、ソラの声を聞いても森川葵本人であることはほぼわからないほど声を変えており、底知れぬ女優魂を感じた…
そして何よりも百田夏菜子こそが本作の功労者であると感じた。
記事の前半でも触れたが、本作はおジャ魔女達が全く登場しない。ファン目線での映画ではあるといえ、やはりおジャ魔女を観たいという理由で、本作を楽しみにしてきた人たちは数多くいることだろう。
そういったファンへの中弛みを緩和するのが、おジャ魔女らしさのある新鮮で馴染み深いイラストと、百田夏菜子おジャ魔女ワールド全開の声色だ。映画ブラックパンサーでの演技が評価されて以降、声優としても注目され出している彼女にとっては、本作が大きな出世作となることは間違いない。限りなく千葉千恵巳(春風どれみの声優)に寄せた声は予告の中でも特段光るモノがあり、全く馴染みのないキャラクターでありながら、どこか親しみ溢れるキャラクターとなっている。
そして、そんな想いが積もり積もって百田夏菜子の口から解き放たれるファンなら誰もが知る例のセリフに、思わずガッツポーズをしてしまう。

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新鮮でありながら、馴染み深い物語。

て、メイン3人の話で出した、本作の馴染みのないヒロイン3人の物語だが、前述したように、おジャ魔女の物語ではなくても、おジャ魔女のスタッフ達が贈る、おジャ魔女のファンに向けた、おジャ魔女のファン物語だということは、忘れてはいけない。キャラデザから、百田夏菜子のどれみ似なギャグテンポ、BGM、OP、EDに至るまで、数えだすとキリがないほどおジャ魔女が作品から溢れている。溢れ出ているおジャ魔女要素を差し引いても、ファンの間ではおジャ魔女達が全く出てこない問題が議論される。
私自身の考え方としては、
懐古映画としてなら、3人の前におジャ魔女達が現れて、魔法でパパッと解決してしまえば、本作で巻き起こる物語は全て解決するだろう。そうすれば、おジャ魔女も活躍して、出演時間も尺も稼げ、ファンからは及第点をいただける。
同じ年で云えば『デジモンアドベンチャーLAST EVOLUTION絆』が東映作品としても、ファンムービーとしても、本作に近い部分がある。デジモンシリーズの場合は、太一とアグモンの物語であり、太一を大人にすることで、ファン等身大の目線を作りながらも馴染み深いデジモンの物語の続きとして、成立させることができる。
しかし、おジャ魔女の物語はある種完結している。どれみは、高校卒業時に魔女見習いを卒業する選択をとっている。
ゆえに、ファンに馴染み深いどれみ達を従来の姿のまま登場させ、魔法を使うことは当人達の卒業という決断をひっくり返すほどファンにとって許せない出来事となってしまう。薄らとしたアニメの記憶だけを頼りに来場するファンと、小説版も読み進めたファンとの間を取ると、本作の形が一番スマートな着地点ではないだろうか。
東映で云えば、仮面ライダーの映画では、世界線が別だったり、時系列を無視した本筋とは全くの別物語だったりすることがよくある。私は、この手の都合の付け方ほど嫌なモノはない。
限りなくどれみ達の存在する世界でありながら、限りなく現実である物語、それこそが今回の『魔女見習いをさがして』であると云える。
おジャ魔女どれみシリーズ20周年ということで、制作陣がファンに向けて“何かを作りたい”“何かを贈りたい”という想いから誕生したであろう本作。挑戦的な設定でありながらも素晴らしい演出の連続、かつておジャ魔女を観て育った君に、かつておジャ魔女を観て勇気をもらったあなたに、大人になってからこその悩みを前に、改めて勇気とハッピーとラッキーをおジャ魔女たちからもらえる至極のファンムービーである。いろんな小ネタが満載なのでぜひ探してみてね

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この記事を書いた人

関西を中心に映画活動をしております。
気づけば映画業界に片足突っ込んでいる状態でした。
映画メディアと映画ブログの中間のような存在を目指して細々と運営しようかなと思っております。
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